ITエンジニアをやっていたころ、多くの同僚と仕事をしましたが、その中に、「できる」人が2人いました。
この場合、「できる」というのは、現場で腕が立つという意味です。
たとえば、システムがダウンして、みんな今日中には家に帰れないんじゃないかと思っているような状況で、トラブルを解決して全員を終電に間に合うように帰してくれるような人のことを指します。
当時、そういう人は2人しかいなくて、そこには紛れ間もない共通点がありました。ぼくの心に焼き付いているだけではなく、翻訳という畑違いの仕事に就いた現在も日々の業務の指針になっています。
ところで、ゆる子Aは翻訳関係の教育業務に関わっていたこともあります。
ですから自分の業務経験だけではなく、一定数の生徒さんを指導した経験もあります。
その経験から見ても、この「できる」2人の共通点は、在宅ワーカーが実務能力を上げていくためのヒントになると考えます。
目次
- 本当に腕の立つ人はマニュアルを熟読している
- 昼休みの使い方
- 「仕様書はちゃんと読みましたか?」
- できる人をまねる
- できる人は孤独に強い
- 在宅ワーカーは支給された資料は穴のあくほど読み返してみるのがおすすめ
本当に腕の立つ人はマニュアルを熟読している
2人とも本社の人ではなく、下請け会社の社員でした。
この2人に共通していたのは、「仕様書や手順書をひたすら熟読していた」という点です。仕様書というのは、その製品に関するさまざまなデータや、操作手順などを記した技術文書です。読んで面白いものではありません。
当時扱っていたのは大きなシステムでしたので、仕様書もPDFで軽く数百ページはありました。
仕様書は、読み手のことなど考えていないデータの羅列ですから、むちゃくちゃ読みずらいのです。
何度読んでも頭に入ってきません。
ぼくは適当に読み流していました。
しかし、それを、この2人とも穴のあくほど読みこんでいました。
昼休みの使い方
二人とも10歳くらい年下でしたが、一人は僕の直接の上司で、いろいろ手取り足取り教えてもらいました。エンジニア考え方などはほぼこの人から教わりました。
もう一人は別のプロジェクトの人で、親しい接触はほとんどありませんでした。
そのころ働いていたのは大きな職場で、外には巨大なグラウンドがありました。
昼休みになるとほとんどの人は、戸外に出ます。やっていることはまちまちです。
僕は、食堂でうどんをかき込んだのち、グラウンドの周囲を一周するのが日課でした。それだけで昼休みが終わります。
外国から来た人の中には、グラウンドの隅っこに敷物を敷いて、地面に座り込んでひたすらお祈りをしている人もいました。
毎日、バレーボールやソフトボールをやっている集団もいました。昔懐かしいというか、昭和のドラマでよく見た覚えのある光景です。
別にいいんですけど、本当に毎日やっているんですよね。それで楽しいならいいんだけど。
一方、ぼくの上司という人は、食堂でうどんを食べたらすぐにサーバー室に引き返して、昼休みが終わるまでずっと仕様書を読んでいました。毎日ひたすらです。
この職場では、みなさんしょっちゅうタバコ休憩に行くんですけど、この人はそれもしません。ひたすら仕様書を読み返していました。寡黙な人でした。
独身で、このプロジェクトのためにわざわざ職場の近所に引っ越してきたと聞きました。
連日深夜に及ぶ作業なので、洗濯もろくにしていない感じで、ときどき服が臭うこともありました。
それでも、昼休みさえとらないで、仕様書を読んでいました。
「どうして外に出ないんですか」と聞いたことがありますが、笑って答えてくれませんでした。
今になって思うのは、仕様書の大事さを知りぬいていたんだろうな、ということです。
「仕様書はちゃんと読みましたか?」
もう一人も10歳くらい年下の人です。
彼は別のグループに属していたので、具体的には何一つ教えてもらったことはありません。
ただし、トラブルが発生すると、その人が解決することが多いというのは見て知っていました。本社の人も、困ったときは、彼の意見に耳を傾けているようでした。
だから、ぼくも八方ふさがりでどうしようもないときに、何度か頭を下げて教えを請いに行ったことがかあります。
ですが、そのたびに、露骨に嫌な顔をされただけです。
「仕様書はちゃんと読みましたか?」と一言言われて終わりでした。
いい思い出はありません。
しかし、「仕様書はちゃんと読みましたか?」というのは「お前ちゃんと読んでないだろ」ってことでしょう。
実際、ちゃんと読んでいませんでした。
甘えんなよ、自分で解決しろよって言いたかったのだと思います。
そういう意味では、大きな教えをもらっていますね。
できる人をまねる
現在、ゆる子Aは、現在は別な仕事(翻訳)についていますが、各案件のスタイルガイドやクライアントからのフィードバックなどは穴のあくほど読みこむようになりました。
それで報酬が発生するわけではありませんので、これはタダ働きと言えばタダ働きです。
しかし、本当にできる人はああいう感じだと思っているのでマネをしています。
あの2人みたいになりたいという気持ちが今でもあります。
それに、こういうところで手を抜いていると、他人が見たらわかると思うんですよね。
実際、指導する側に回った経験から言っても、細かい箇所を何度も指摘して、それでも直らないような人はあまりモノになっていません。
できる人は孤独に強い
昼休みに群れてバレーボールをやっていれば楽しいかもしれませんが、いざというときに頼りになるかどうかは別問題です。
もちろん、本当にバレーボールをやりたくてやっている人だけではなく、そのほうが組織の中で生きていくためには、なにかとやりやすいというのもあるのでしょう。
しかし、これからはそれでやっていけるという時代でもないようです。
やりたくもないバレーボールを付き合いでやっている人の方が生きていきやすい、という時代が終わってくれるのであれば、僕的には大歓迎です。
在宅ワーカーは支給された資料は穴のあくほど読み返してみましょう
それはともかく、在宅ワーカーで取引先の信頼を得たいと考えている人は、まず支給された資料は穴のあくほど読み返してみることをお勧めします。
この作業は、これをするだけで能力がパッと上がるというようなものではありませんが、納品物をチェックする側には、少なくとも手を抜いていないという姿勢だけは伝わります。
それに、僕の経験からは言っても、こういう地道な作業こそが、本当に ギリギリの球際のところで何度も僕を助けてくれました。
まさに刑事ドラマの「現場百篇」というやつです。
気の利いた参考書にあれこれ手を出すのもいいですしょう。しかし、まずは取引先から支給された、実に面白くない資料を穴のあくほど読み返してみてはいかがでしょうか。きっと得られるものがあると思います。
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