在宅ワーカーの稼ぎ方(応用編) – AIにどう対処すればいい?

AIの進化に脅威を感じている在宅ワーカーは多いと思います。僕もその1人です。じゃあどう対処していけばいいのか、というと、僕自身もまだいろいろわからないことが多いのですが、現時点での考えを書いてみます。内容は翻訳に即していますが、他の在宅ワークに置き換えても応用できると思います。もっと言うと、機械に取って代わられる可能性のあるすべての業種にも応用できると思います。結論としては、今の経験を活かしながら、徐々に機械を使う側に回っていくか、機械にできないことを身に付けていくしかないと思います。どっちにしてもAIと同じ土俵で戦うことは避けたいところです。お互いがんばりましょう。

(基礎編「フリーランスの翻訳業で食べていけるようになる方法」については、別の記事で詳しく述べます。僕の知っていることはすべて提示します。)

目次

  • 生き残る道は2つ
  • 他の道はないのか
  • 実務翻訳はすでに2つの業種に分離中
  • 当面やるべきことはあきらか
  • 個人事業主であることのメリットとは
  • 大企業のウェブ翻訳は「生きた教科書」
  • 最終到達地点はスモールビジネス向けの総合コンサルティング業務
  • まとめ:危機感をモチベーションに変える

生き残る道は2つ

フリーランスの翻訳者としてなんとか食べていけるようになったら、次に考えなければならないのは「自動翻訳にどう対処するか」という問題です。このテーマは、2015年に”深層学習(ディープラーニング)の分野でブレークスルーが起きた”というニュースが伝わってきたあたりから盛り上がってきたように思います。

結論から言えば、機械を使う側に回るか、機械にできないことをやるか、どちらかしかないと思います。そして、前者の道を歩むなら、データ解析や自然言語処理について勉強を進めていく必要があり、後者の道を歩むなら、コピーライティングやマーケティングの力をつけていく必要があるでしょう。

他に道はないか

翻訳業は、書籍に携わる出版翻訳と、それ以外の全般に携わる実務翻訳があります。ゆる子Aは実務翻訳をやっているのですが、2015年当時、真っ先に考えたのは出版翻訳に転向することでした。

思いとどまった一番の理由は、出版で食べていくのはかなり厳しいという現状を知ったからです。出版業界全体の売り上げは20年前に比べて半分に落ち込んでいます。一方で、ウェブ業界にはどんどん資金が流入しており、ウェブから出版に飛び込もうとするのはあまりにリスクが大きすぎました。

また、これは最近になって思いついた後付けの理由ですが、出版に転向しても根本的な解決にはならないと考えるようになりました。出版翻訳に行くということは「機械にできないことをやる」方向ですが、ひたすら翻訳スキルを上げていくだけでは、追いかけてくるAIとのいたちごっこから根本的に抜け出すことはできないと思われるからです。

実務翻訳はすでに2つの業種に分離中

実務翻訳業は、すでに2つの異なる業務分野に分離しつつあります。いずれは他の業種もそうなっていくような気がします。その意味では、在宅ワーカー全般の未来形の様相を呈しているようにも見えます。

1つ目は、機械を使う側に回る仕事です。一般にポストエディット(後編集)と呼ばれていますが、機械翻訳で出力された文章のおかしなところを人間がチェックして仕上げる業務です。オンラインマニュアルのように定型的な表現が多用される分野で活用が進んでいます。

そうした分野ではすでに人間が一から翻訳する機会はほとんどなくなってきており、機械が翻訳したものを、最後に人間が調整して仕上げるという形に変わってきています。

従来の翻訳に比べればワード当たりの単価も下がります。今後、機械翻訳の精度がさらに上がれば、それだけ人間の手間は減っていくでしょうから、単価はもっと下がっていくと思われます。それにつれて、人間側に要求されるスキルも、いわゆる「翻訳」とは次第に違ったものになってくると予想されています。

2つ目は、機械にできないことをやる仕事です。Web翻訳、マーケティング翻訳などと呼ばれていますが、キャッチコピーの翻訳などが典型です。原文に忠実な訳よりも売り上げを伸ばす表現力、消費者に訴える文章力が求められます。従来の翻訳(トランスレーション)と区別する意味で、あえてトランスクリエーションと呼ばれる場合もあります。また、動画の字幕案件が増加しつつあるのもこの分野の特徴です。

現時点で実務翻訳業に携わっている人は、ポストエディットかマーケティングか、すでにどちらかに軸足を置いた立場に置かれているはずです。ゆる子Aは、かつてはマニュアル翻訳などもバリバリやっていたのですが、年ごとにそういう仕事は減っていき、気づけばもっぱらマーケティング翻訳を担当するようになっていました。

これら2つの業務は一見両極端のようでも、年々AIに追い上げられていくという点では基本変わらないように思います。数年以内にAIがキャッチコピーを翻訳できるようになるとは思えませんが、いずれはそういう時代が来そうな気はします。ただ、その頃には、翻訳以外のライター業も、それ以外のクリエイティブな業務も、オフィスワーク全般も機械で代替可能になっているかもしれません。

当面やるべきことはあきらか

しかし、当面やるべきことは見えています。ポストエディットの道に進むなら自然言語処理やデータ解析の勉強をスタートして、単なる作業者で終わらない道を探っていくべきだと思います。

一方、マーケティング翻訳に携わるなら、コピーライティングやマーケティングを基礎から学ぶべきです。それによってさらに訴求力のある表現力を磨くことができます。

以上のことは、翻訳以外の業務にも当てはまるはずで、今の経験を活かしつつ、 徐々に機械を使う側に回っていくか、機械にできないことを身に付けていくしかありません。


個人事業主であることのメリット

さらに話を掘り下げてみたいと思います。

今後AIがますます賢くなることはあっても、今よりも愚かになることはありえません。今後5年ならともかく、10年、15年と仕事に携わりたいと考えるなら、ポストエディットもマーケティング翻訳も、スキルを上げていくだけでは 追いかけてくるAIとのいたちごっこが続くだけです。

AIと同じ土俵で戦うことを避けるためには、下請けの作業者という立場そのものからの脱却を図る必要があります。

とはいえ、フリーランスの翻訳者が、いきなり自分の事業をスタートするのはなかなか難しいはずです。確実に食べていくためには、まずは企業の下請けからスタートするのが得策でしょうし、これから翻訳をやろうと思っている人にもまずは企業の下請けの仕事をおすすめします。

(少し脱線しますが、これから翻訳をやろうと考えている人には、翻訳という仕事自体が本来は楽しいものだということを書き添えておきます。現在のゆる子Aにとっては、YouTube動画に字幕を付ける仕事は、時間を忘れてしまうくらいに楽しいものです。)

ウェブ翻訳は「生きた教科書」

最近ゆる子Aは、コピーライティングやマーケティングの勉強を始めました。それでわかってきたのは、現在の仕事自体が、実に貴重な勉強の機会になるということです。ウェブ翻訳業務は、各企業のコピーライティングやマーケティング手法について学ぶことのできる「生きた教科書」のようなものなのです。このことは、勉強を進めていくにつれてじわじわ実感できるようになってきました。

ウェブページを翻訳しようと思えば、まずはページの英文をじっくりと読みこまなければなりませんが、その際に、コピーライティングやマーケティングの知識があれば、単に英文を読解するという視点を抜け出して、コピーライターやマーケターの意図を考えながら読み進めていくことができます。

「このページは、消費者心理のどこに訴えようとしているのか?」「ページの各素材はどういう意図で配置されているのか?」などなど、じっくりと観察していけば、さまざまなことを学べます。

これは、勉強になると同時に、訴求力のある表現力を磨くことにもなります。ですから、クライアントの満足度をアップすることにもつながります。

こうした学びすべてが、AI化の進む近未来において、翻訳者が最終的に生き残っていくための貴重な知見になると思っています。

フリーランスは作業員を脱して、スモールビジネス向けの総合コンサルティング業務を目指すべき

入り口は大手企業の下請け業務でも、最終的にフリーランス翻訳者が目指すべきなのはスモールビジネス向けの業務ではないでしょうか。

大企業には、専門のデータサイエンティストや、専属のコピーライター、専属のマーケティングコンサルタントなどの専門家集団が在籍しており、個人が少々勉強したところでまともに戦える見込みはないからです。

ただし、そうした場で仕事を活かしながらノウハウを蓄積していけば、やがては、スモールビジネス向けのライティング、翻訳、マーケティング、コンサルティングなどをまとめてこなせる程度の力をつけることはできるのではないかと考えています。

そのためには、ここまで書いてきたように、企業のウェブページ翻訳を通じて学ぶことも大切なのですが、そうして得た知識を生かして、実際に、小さなブログや動画、ウェブサービスなどを自分で作成し、実践してみることも有効だと考えています。

このブログでも、僕がコピーライティングやマーケティングの勉強を進めながら得た知識を少しずつ反映してみようと考えています。

やがて、マーケティングやセールスのノウハウが蓄積されてくれば、次の展開を考えることもできるはずです。海外には、まだまだ日本市場への進出を考えていないような、面白いスモールビジネススもたくさんあるでしょう。

そういうサイトを見つけて営業をかけ、サイトの日本語化から日本向けのマーケティング戦略まで丸ごと請け負うというという選択肢も将来的にはありなんじゃないかと考えています。

ここまで到達することができれば、目下のところAIが対応できる次元を超えていることになります。

まとめ:危機感をモチベーションに変える

在宅のフリーランスは、会社員に比べて収入が安定しないというデメリットがありますが、その分、危機感だけは豊富に持ち合わせています。その危機感は、勉強を続けるモチベーションとしても有効です。

また前述したようにさまざまな企業の方法論を学ぶ機会にも恵まれています。

それらのことは、ロングテールの時代を生きていく上で、決して不利にはならないと僕は考えています。