翻訳を仕事にするためにやるべきこと(その2) – クラウドは早めに卒業しよう

前回の記事では「翻訳はマイペースで働きたい人に向いている」という点をお話ししました。

この記事では、

・クラウドソーシングからは早めに卒業した方が良い
という点について書きます。

その理由は、単価があまりに低すぎるからです。

目次

  • 入り口としてはクラウドもボランティアもあり
  • クラウド翻訳の報酬は、通常の案件の1/2以下
  • クラウドの報酬は、全国のアルバイト最低賃金以下
  • 2つの目安:ワード単価8円と1500~2000ワード/日
  • 翻訳会社から案件を受注するにはどうすればいいか

入り口としてはクラウドやボランティアもあり

クラウドソーシングから早めに撤退した方が良い理由は、単価が低すぎるからです。ただし、全否定ではありません。

翻訳会社と正式な契約を結ぶのは、駆け出しのころはなかなか難しいはずです。

それ以前に経験を積むという意味では、クラウド案件やボランティアでの翻訳などもありだと思います。

僕自身が経験していないので、無責任なことは言えないのですが、「量をこなす」という意味では一定の効果は期待できるのではないでしょうか。

ただし、長くやるものでないのはまちがいありません。

なるべく早めに、ちゃんとした翻訳会社と契約を結べるよう、トレーニングを積むことを優先した方がいいでしょう。

ちなみに、翻訳会社と契約を結ぶには、まず”トライアル”と呼ばれる実力テストに合格する必要があります。

クラウド案件の報酬額は、通常の翻訳案件の1/2以下

クラウド案件の具体例を挙げてみます。

この記事を書くにあたって、クラウドソーシングのサイトに現在出ている英日翻訳案件の求人を調べてみました。

クラウド案件のサイトでは、入札という形で落札金額を競争する形になっているようです。

某クラウドサイトには、たとえば、以下のような英日翻訳案件が出ていました。

作業量「19716ワード」で、入札額が5万円~10万円。

僕が確認した時点ですでに数十人の方が入札していました。

翻訳は基本的にワード単価で考えますので、この仕事もワード単価に換算してみましょう。

実際の入札額は不明ですので、とりあえず上限と下限の中間を取って、75,000円で受注したと仮定してみます。

すると19716ワードを翻訳してその報酬が75000円になりますので、ワード当たりの単価は、

75,000 / 19716 = 3.8円
ワード当たりの単価は3.8円となります。

ちなみに、通常の翻訳会社経由の案件ですと、ワード単価の下限は大体8.0円あたりです(機械翻訳案件の場合は6円程度です)。

すると、このクラウド案件は、翻訳会社経由の案件の1/2以下で受注したことになります。(ちなみにワード8円という金額は覚えておくといいと思います。)

もちろん75,000円というのはあくまで仮定の落札金額であって、実際の落札金額はもっと低くなるかもしれません。

もし入札下限額の50,000で受注したと仮定すれば、単価は約2.5円に下がりますので、通常の翻訳案件の1/3以下の単価で作業しなければなりません。

クラウド翻訳は全国のアルバイト最低賃金以下

上記のクラウド案件について、もう少し詳しく検討してみます。

人が1日にこなせる翻訳量には限度があり、翻訳の場合、一般に1,500~2,000ワードが無理のない作業量だと考えられています。(ちなみに1,500~2,000ワード/日という数字も覚えておくといいと思います。)

1時間あたり200ワードのペースで作業を進めたとすると、1,500ワードで7時間。2,000ワードで10時間かかります。

これを上記の単価(3.8)にあてはめた場合、1日7時間翻訳したと考えると、1500ワードですから、報酬額は5,700円です。(=1500×3.8=5,700円)

10時間作業した場合は、2,000ワードですから
7,600円(=2,000×3.8 )の報酬です。

時給に換算すれば、814円です。

全国のアルバイトの平均の最低時給を今ネットで調べたところ874円だそうです。

つまり、クラウドソーシングの翻訳案件は全国のアルバイトの最低時給以下だということがわかります。

(しかも、あくまで全国平均です。東京都の最低時給ならば985円ですからさらに上回ります。)

さらに、その他の条件面から考えてもクラウド案件よりアルバイトの方が優遇されていることがわかります。

アルバイトは、採用に当たって語学力も翻訳力もPCのスキルも問われることはありません。

また、パソコンなどの設備を自前で用意する必要もなく、入札という形で他の候補者と競合する必要もありません。

しかも、採用が決まれば長期にわたって、週何日、何時間と継続的に働けます。

こう考えると、クラウドソーシングで翻訳案件を受注することには、経験を積む以外のメリットがまったくないということがわかります。

もちろん、地理的な条件や、家から出られない事情など、さまざまな理由が考えられますので、そういった場合には在宅ワーク以外の選択肢がない場合もあるでしょう。

しかし、そうであればなおさら早めにまともな翻訳会社と契約を結べるように、勉強を積むことをお勧めします。

ちなみに、このクラウドソーシングサイトでは、他にも2万ワードで、入札額5万~10万円で発注されている翻訳案件がありました。

上記とほぼ同じ条件ですので、大体、このあたりがクラウド翻訳の相場だと考えてもいいのではないでしょうか。

おそらく発注側は、それほど高い品質を求めていないのでしょう。しかし、品質を問わないのであれば最近はAI翻訳でもそこそこ間に合います。

その点も含めて考えると、クラウドソーシングの翻訳案件は、手始めの経験としては否定しませんが、長く続けるべきものではないことがわかります。

2つの数字:ワード単価8円・1,500~2,000ワード/日

これから実務翻訳に携わろうと考えている人は、ワード単価8円と、1日の作業量1,500から2,000ワードという、この2つの数字を頭の隅にとめておくといいと思います。交渉の際の目安になります。

■まず、8円について。

8円以下の単価を提示してくる翻訳会社は、2重下請けで翻訳者を募集している可能性があります(ただし機械翻訳案件は除きます)。

ただし、たとえ単価が6円代だったとしても、クラウドの3.8円ほどは悪くありませんし、単価が低い分トライアル(実力テスト)のハードルも低くなっているでしょうから、最初の経験としては、クラウドよりはお勧めできます。

(機械翻訳案件の場合は、8円でなく6円を下限に考えてください。機械翻訳案件については別の記事で説明していますので参考にしてください。)

■1日の作業量

終日働いたとして、1,500から2,000ワードというのが無理のない数字です。(緊急時にはマックス3,500くらい・・・)

受注する際には、一日2,000ワードの進行で納期に間に合うかどうか計算してから引き受けましょう。

僕も最初のころは、自分のペースが分からず、うっかり引き受けてしまってから苦しんだことがあります。

この仕事は納期が絶対です。納期に遅れると信用も失うことになります。

2,000/日以上のペースが必要な場合は、潔く断った方が無難です。一時的には無理が利くようでも、長い目で見れば、心身のバランスに無理が生じて、結局は生産性が下がる可能性が高いです。

とにかく、ワード単価8円と、作業量1,500~2,000を目安に考えてみましょう。

翻訳会社から案件を受注するにはどうすればいいか?

翻訳会社からの案件を受けるには、まず各翻訳会社の「トライアル」というものを受験して、合格する必要があります。これは実力テストのようなものです。

これに合格すると、その会社の社外契約翻訳者として契約を結ぶことになります。

以後、案件が発生次第、オファーが回ってくるという流れとなります。

つまり、翻訳者としてやっていくためには、まず「トライアル」と呼ばれる試験をなんとしても突破しなければなりません。

(逆に言えば、さきほどのクラウド案件は、「トライアルに合格しなくても翻訳の仕事ができる」というメリットがあったと考えることもできます。そしてその分、単価が低く抑えられているとも言えます。)

ただし、繰り返しになりますが、長く、やりがいのある仕事として翻訳を続けたいのであれば、不安定なクラウドソーシングは早めに卒業して、一刻も早く翻訳会社のトライアルを突破できるだけの実力を身につけたほうがいいと思います。

まとめ

今回の記事の内容をまとめますと、

・クラウドソーシングの案件は手軽で入門用としては悪くない
・ただし、通常の翻訳案件の1/2~1/3以下の収入しか得られない
・全国平均のアルバイトの時給よりも安い
・したがって、長く続けるべきものではない

ということについて書きました。

そして、おしまいに、通常の翻訳案件を受注するためには、各翻訳会社の「トライアル」と呼ばれる実力テストを突破する必要があるということを説明しました。

トライアルさえ突破すれば、じきに案件を受注できるようになります。そうすれば、OJTでどんどん実力アップが望めます。

OJTとは、On the Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の頭字語です。「職場での実地訓練」という意味です。

ただし、翻訳会社のトライアルをやみくもに受験しても、よほどの才能と運に恵まれている人でなければ、何度か不合格を味わった後に挫折してしまいます。

まずは、トライアルを突破するための勉強が必要です。
ただし、当たり前ですが万人向けの勉強法というのはありません。

翻訳を志す人の実力にも、実にさまざまなレベルがありますので、そのレベルによって、適切な勉強の内容も変わってくるからです。

したがって、自分がトライアルを突破するためにどのような勉強が必要かを知るには、まず、自分にどの程度の翻訳力があるのかを、客観的に知る必要があります。

したがって(その3)では、次のステップとして

「自分の実力を客観的に知る」にはどうすればいいか、について説明します。

僕自身は、翻訳者ネットワーク「アメリア」 の「定例トライアル」という制度を利用するのがベストだと考えています。

というわけで、(その3)に続きます。

アメリアの概要はこちらで読めます。